ニューズレター

2005年 Summer Vol.11 (2005年8月発行)より

アメリカ審美歯科学会に参加して

 2005年4月19日から23日までアメリカ、ナッシュビルで行なわれたAmerican Academy of Cosmetic Dentistry(AACD、アメリカ審美歯科学会)に出席してきたので報告する。
 AACDは今回で21回目を数え、会員数が8千人、今回の参加者も4千人というアメリカ最大の審美学会である。毎年テーマが決まっており、今回は“Significant Science Magnificent Art”。多くの講演やハンズオン・セミナーから参加者が自分の好きな講演を選んで出席するもので、当然人気のあるスピーカーはすぐに一杯となってしまう。数年前から全てのセッションが事前登録制となり、申し込んでいない参加者は当日、空いているコースをボードで確認して申し込んだり、キャンセル待ちをしたりするのだが、今年の参加者は予想以上に多くなり、殆どのコースが満員状態で、当日どこにも登録できないケースが多く見られた。また、昨年まで参加費のほかにエキストラ・チャージがかかっていたハンズオン・セミナーは、全てにスポンサーが付き、参加費が無料になった。そのためこれも大人気となり、半年以上前に申し込んだのにキャンセル待ちというコースもあった。日本からの参加者は東京の高橋先生、江夏先生と私のみでここ最近では最低の3人。ちょっと寂しかったが、アメリカの学会を満喫してきた。
 登録ブースはすでに18日から開いており、20日朝のオープニング・ゼネラルセッションまではビジネス・ミーティングや認定医試験のためのレクチャーなどが行なわれる。19日のゼネラルセッションでは2002年にヒットしたスピルバーグの映画“Catch Me If You Can”の原作者Frank Abagnale氏によるトークショーが行なわれた。この物語は彼の実際の体験をもとに書かれており、その成功秘話を話してくれたのだが、3000人ほど入れるメイン会場は早朝にもかかわらず一杯だった。
 メインのセッションでは最新のテクノロジーを使った講演が多く見られた。今年も相変わらずダイレクト・ボンディングの講演、ハンズオンが最も多かったのだが、特筆すべき点は殆どがナノハイブリッド・コンポジットを使用したものに変わっており、数年前に一時代を築いたハイブリッド+マイクロフィルのテクニックはほぼ姿を消してしまった。セラミック・レストレーションではCAD-CAMを使用したタイプが主流となってきており、ラボ向けの講演もいくつか見られた。口腔内写真も従来のフィルム=ポジタイプから500万画素程度の高画質デジタルカメラによるものに取って代わり、使用方法から保存方法、活用法までを紹介していた。認定医試験でさえもデジタルカメラで受け付けるようになっている。また、このデジタルカメラを使用したデジタル・イメージングによる患者へのプレゼンテーションの講演もあった。ただし、日本のデンタルショーでは3割くらいを占めるまでになった電子カルテは、レセプトが無いことも影響しているのか、殆ど見られない。ホワイトニングでは二酸化チタンや鉄イオンなど、過酸化水素を効果的に活性化させるための新しい物質を添加したものが発表されていた。中でもメタルハライドを使用し、鉄のイオンをリアクターとして用いるDISCUS DENTAL社の新しいホワイトニングシステム“ZOOM2”は人気があった。また、ここ数年の傾向として、成功を収めている歯科医院や、経営のアドバイザーによるマーケティングやスタッフ教育など経営に関する講演が多くなっている。日本でも最近、経営のセミナーが多く見られるようになってきたが、学会で行なわれることは少ないように思う。このあたりも日米の文化の違いか。
 学会が開催されたナッシュビルという街は日本人には余り馴染みがないが、実はアメリカ人にとってはアメリカの演歌であるカントリー発祥の地、大スター、エルビス・プレスリーを生んだミュージック・シティとしてとても有名である。その中でナッシュビルではプレスリーの次に有名といっても過言ではないカントリーのスター、ドリー・パートンによるチャリティコンサートが21日の夜に開かれた。このチャリティは“Give back A Smile”と呼ばれるドメスティックバイオレンスの被害者救済のためのイベントで、コンサート以外にも出店歯科企業を中心に商品を提供し、オークションを行なって、その売上を寄付している。このあたりが実にアメリカらしい。
 学会が行なわれている間、毎晩何らかのイベントが行なわれていたのだが、毎年、土曜日の夜に行なわれる学会の打ち上げのディナーダンスは、今年は日程の関係で金曜日の夜に行なわれた。その影響もあり、打ち上げてしまった後の土曜日のレクチャーは残念ながら今ひとつ盛り上がらなかった。
 もうひとつ、この学会で副会長選挙があったのだが、初めて歯科医師でない一般の人物が選ばれた。さらにこの方は女性で、歴代副会長が順番に会長になるAACDでは、数年後にはAACD史上初の一般人女性会長が誕生することになる。歯科医師ではなく、また女性を選んだという思い切った改革が、AACDが既存の概念にはとらわれず、新しい試みを行なっていくという強い信念を感じることができた。来年はサンディエゴで5月16日から20日まで行なわれる。テーマは“Pillars of Perfection”。また、数年後には再びハワイで開催されることも決定している。今後もAACDには期待していきたい。

(広報委員 椿 智之)

(左)左から元会長Dr.D.Mayeda、筆者、今回副会長になったMiss.L.K.Brown、元会長Dr.K.Glick
(右)左から筆者、DISCUS DENTAL社長Dr. W. Dorfman、高橋先生


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